Herbie Hancock: Possibilities (Hancock Music)

possibilities

ハービー・ハンコックのライフワークの1系統として、ティンパン・アレイや40~50年代ジャズ曲からの脱却というか、新しいスタンダード(ニュー・スタンダーズ)の追求というのがあるような気がします。これはハービーさんの師匠マイルスが推し進めていたもので、特に『ユア・アンダー・アレスト』にその姿勢が集約されていますが、従来のスタンダードではなく、かといってオリジナル曲でもない、ニュー・スタンダードを創出しようという流れをハービーさんが受け継いでいるような印象です。

今回紹介する『ポッシビリティーズ』も、このニュー・スタンダード系統のアルバムです。各曲にそれぞれゲストをフィーチャーして従来のスタンダードとは一味違った曲を取り上げ、その「可能性」を追求しているわけです。

1曲目 "Stitched Up" でフィーチャされるのが、ブルース歌手のジョン・メイヤー。こてこてのブルースではなく、白人のソフィスティケーションが入った聴きやすいブルース。歌が終わった後に出てくるハービーさんのソロはしつこい畳みかけでブルース・フィーリングがあふれるモノ。そのままフェードアウトします。2曲目の "Safiatou" のゲストは、ギターのカルロス・サンタナとペナン出身の歌手アンジェリーク・キジョーです。サンタナの南米的な情熱あふれるギターとメランコリックな声のキジョーとの掛け合いで歌が進み、ハービーのソロも二人のムードを引き継いだメランコリックなものになっています。

3曲目の "A Song for You" はレオン・ラッセルの名曲で、カーペンターズやカーメン・マクレエの名演が残っています。ここでのゲストは美人で、昨年は妊婦ヌードで世間を騒がせたクリスティーナ・アギレラ、しかし上手い歌手ですね。このアルバム中のベスト・トラックといってもいいような歌ですが、こう感じるのは私がとりわけこの曲を好きだからかもしれません。4曲目はポール・サイモンの曲で "I Do It for Your Love"、ゲストもポールです。元の歌を知りませんが、思いっきりジャズになっていて、歌+伴奏ではなくポールもヴォーカル・セクションを受け持っているといった感じです。

5曲目の "Hush, Hush, Hush" は黒人霊歌かと思ったら、ポーラー・コールという人の曲。歌はアニー・レノックス、スコットランド出身の歌手だそうです。そして6曲目、ニュー・スタンダード物の常連さん、21世紀のガーシュウィンかコール・ポーターかといった風情のスティングが登場します。曲は "Sister Moon"。カサンドラ・ウィルソンみたいな声で歌っています ;) この人はもともとジャズとの親和性が高いので、当たり前といえばあたりまえですが、ジャズとして素晴らしいトラックになっています。

7曲目はブルースのジョニー・ラングとイギリスのジョス・ストーンがゲストで、 "When Love Comes to Town"、U2の曲だそうですが、ベタのブルースですね。後半どんどん盛り上がっていき、ハービーさんのソロでクライマックスに達します。8曲目はビリー・ホリデイの名曲 "Don't Explain"。フィーチャーされているのはアイルランドのダミアン・ライスとリサ・ハニガン。なんか辛気臭い演奏です :cry:

9曲目はスティーヴィー・ワンダーの名曲 "I Just Called to Say I Love You"。ゲストはラウル・ミドン。盲目の歌手だそうです。そしてハーモニカでスティービーご本人も参加しています。しかし、この歌手、素晴らしい声です。スティービーのハーモニカも優しく美しい曲に仕上がっています。最後は "Gelo na Montanha - 第一楽章"。作曲とゲストはフィッシュのメンバートレイ・アナスタシオ。エコロジカルな音楽みたいです。

個人的な好みでは、1、2、3、4、6、7曲目のようなコクのあるトラックが気に入りました。

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